私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。
片想い相手は2次元です
話は3日前、2学期初日の朝に遡る。
夏休み明けの教室は、その話題で持ちきりだった。
「ねぇ! 今日来る転校生、すっごいイケメンらしいよ!」
私の前の席に座るのは、親友の陽菜。
笑顔で振り返ると、顎の高さで二つ結びにした、名前通り明るい色をした陽菜の茶髪が揺れた。
「そうなんだ〜」
「そうなんだ〜……って、楽しみじゃないの深月!?
イケメンだよ! 季節外れの転校生だよ!?」
「どんな人かなぁ、普通にクラスメイトとして仲良くできたらいいなぁ、とは思うけど。
イケメンとか関係なしに」
「出た! 深月の草食系女子発言!」
陽菜はびしっ、と漫画のワンシーンみたいに私の顔を指差した。
「深月って、全然恋バナしないし、イケメンにも興味ないじゃん!
可愛い上に成績優秀、運動も歌も絵もなんでもできて、先生からも気に入られてる万能ちゃんなのにもったいない!
かっこいい先輩や同級生にしょっちゅう告白されてるのに、全部断るし!
なんで!?
まさか、私に黙って実は彼氏持ち!?超年上とかドロドロ不倫系とか!?
それなら親友として全力で止めるんだけど!」
「いやいや、いないから彼氏なんて!!」
「ほんとぉ?」
「ほんとほんと」
疑わしげに向けられたジト目を、笑顔でかわす。
(……彼氏がいないのは本当だけど、)
好きな人はいるよ。
……とは言えなかった。
なぜなら、私の好きな人はこの世に存在しない───漫画のキャラクターだから。
私は中1の時から、高2になった現在まで5年間、ずっと《彼》に片思いしている。
そのことは、親友である陽菜にすら言えない、私のトップシークレットだった。
夏休み明けの教室は、その話題で持ちきりだった。
「ねぇ! 今日来る転校生、すっごいイケメンらしいよ!」
私の前の席に座るのは、親友の陽菜。
笑顔で振り返ると、顎の高さで二つ結びにした、名前通り明るい色をした陽菜の茶髪が揺れた。
「そうなんだ〜」
「そうなんだ〜……って、楽しみじゃないの深月!?
イケメンだよ! 季節外れの転校生だよ!?」
「どんな人かなぁ、普通にクラスメイトとして仲良くできたらいいなぁ、とは思うけど。
イケメンとか関係なしに」
「出た! 深月の草食系女子発言!」
陽菜はびしっ、と漫画のワンシーンみたいに私の顔を指差した。
「深月って、全然恋バナしないし、イケメンにも興味ないじゃん!
可愛い上に成績優秀、運動も歌も絵もなんでもできて、先生からも気に入られてる万能ちゃんなのにもったいない!
かっこいい先輩や同級生にしょっちゅう告白されてるのに、全部断るし!
なんで!?
まさか、私に黙って実は彼氏持ち!?超年上とかドロドロ不倫系とか!?
それなら親友として全力で止めるんだけど!」
「いやいや、いないから彼氏なんて!!」
「ほんとぉ?」
「ほんとほんと」
疑わしげに向けられたジト目を、笑顔でかわす。
(……彼氏がいないのは本当だけど、)
好きな人はいるよ。
……とは言えなかった。
なぜなら、私の好きな人はこの世に存在しない───漫画のキャラクターだから。
私は中1の時から、高2になった現在まで5年間、ずっと《彼》に片思いしている。
そのことは、親友である陽菜にすら言えない、私のトップシークレットだった。