私は今日も、虚構（キミ）に叶わぬ恋をする。
「私の方が先に、久我山くんと約束してました」

「は？　何？　彼女気取りかよ」

「彼女気取りじゃありません。
────彼女です！」


教室に残っていたクラスメイトたちが、ざわっと騒ぎ出した。


「え？　光峰と久我山ってそうなの？」
「ていうか、早すぎない？　転校してきたばっかじゃん」
「まじかー……。俺、光峰狙ってたんだけど……久我山じゃ勝ち目ねーよ……」
「ショックだけど、お似合いだよねぇ、2人」


突き刺さる視線がとても痛い。

陽菜が部活に行っててよかった……こんなところ見られたら、絶対びっくりされる。

が、もう後には引けなかった。



「久我山くんを狙うのは、今後やめていただきたいです！」

「狙うって……はぁっ！？
べ、別に、ちょっと気になって話しかけただけだしっ！」


私の剣幕に、宝城先輩はたじろいでいた。

他の先輩たちは、『どうする？』と伺うようにお互い目配せしながら、じっと黙っている。


「……宝城先輩、すいません」


頭を下げたのは、久我山くんだ。


「先輩たちのご好意は嬉しいんですが、今日は先約があるので失礼します。
……行こう、光峰さん」

「へ？　あ、……うん！」
　

私と久我山くんは、悔しげに睨んでくる宝城先輩たちに背を向けて、教室を後にした。








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