私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。
私は考えた末、真っ赤な嘘の馴れ初めを披露した。

「陽菜に隠してたわけじゃないんだけど。
実は、休みの日にたまたま、駅前で優星くんに会ったんだ。
お互い一人で暇だったし、ちょうど2人とも本屋に用事があったから、一緒に行くことになって。

それで、話しているうちに意気投合して、『試しに付き合ってみる?』って話になったの」


(わ、我ながら、悪くはない嘘だと思うんだけど……?)


「えぇー? 深月、そんなあっさり彼氏作るタイプじゃないじゃん」


しかし私の話を、陽菜は露骨に疑っていた。


「だって優星くん、すごくいい人じゃない。
見た目もかっこいいし」

「確かにそうだけどさ〜……。
じゃあ、深月の方から、久我山くんに迫ったっていうこと?」

「迫ってはないけど……」

「じゃあ、久我山くんの方から深月にアタックしてきたの?」

「そういうわけでも……ほら、どちらともなく、自然な流れで、って感じ?」

「えぇ〜。会って間もないのに、自然の流れで『付き合う?』ってなる? 
しかも、全然男の子に興味なさそうだった、あの深月が?
……何か隠してない?」


ジトーっと、疑いの眼差しを送る陽菜。

そんな陽菜に困る一方で、罪悪感が沸いてくる。

優星くんのことも、烈華様のことも、オタク趣味のことも。

私は、陽菜に隠し事ばっかりだ。


「してない、してない。隠し事なんて!」


眉を下げた情けない笑顔と共に、私はまた嘘をついた。


(……陽菜、本当にごめん)


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