私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。
走りながら考えるのは、彼のこと。

(……昨日は一日中ずっと、烈華様のことを考えてたなぁ)


彼はどんな人生を歩んできたんだろう。
どんな戦い方をするのだろう。
好きな食べ物は。趣味は。
どんなふうに笑うのか。
どんな声で話すのか。


彼への疑問が次々と浮かんで眠れなくて、布団の中でもずっとそわそわと落ち着かなくて。

少女漫画でよく見る、ヒーローに片思いするヒロインの気持ちが、初めてわかった気がした。


これはきっと、私の初恋だ。


(……とか。我ながらイタいよね、やっぱり)


わかってはいるのだ。

彼は漫画のキャラクターで、この世には実在しない。

会えない。
話せない。
触れない。

そんな相手に恋をしたって、何にもならない。
きっと何も残らない。

頭ではわかっていても、何かせずにはいられなかった。

だから私は、走っていた。

私自身の、恋のために。
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