私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。
その後、数日間は何事もなく過ぎた。

相変わらず宝城先輩たちは聞き込みをしてるらしいけれど、直接嫌がらせをされたり絡まれたりすることはなく、私は平和に過ごしていた。

クラスの方も、最初はクラスメイトの注目を浴びて落ち着かなかったが、何日かするとみんな慣れたみたいで、私と優星くんが話していても気にしなくなった。

あと変わったことと言えば、放課後、学級委員長として、佐原先生の資料作成の手伝いをしていたときのこと。


「光峰。お前、3年の宝城たちとやりあったんだって?」


佐原先生は、仕事の手を休めずに、世間話のような調子で私に尋ねてきた。


「やりあったって……ちょっと話しただけですよ」

「そうか? 
『久我山を巡ってバチバチの三角関係になってた』って、クラスの奴らが噂してたが」

「そんな大げさな。久我山くんが困ってたから、間に入っただけです」


先生相手に、『私は久我山くんと付き合ってるんです』とか、『宝城先輩が久我山くんを狙ってたんです』とか、恋愛系の話はしづらい。

結果、最低限の説明しかできなかった私だが、佐原先生は全てお見通しのようだった。

盛大なため息と共に、珍しく愚痴を漏らす。


「宝城はなぁ、俺も手を焼いてるんだよ。
去年……あいつが2年のとき、俺は生活指導を任されていてな」

「そうなんですか?」

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