私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。
「あいつ、学校行事やクラスの話し合いに全然協力しないで、好き勝手自分のことやってたんだよ。
そのくせ目立つし、変なカリスマ性があるから、クラスの奴らもだいぶ影響されちまってな。

『真面目にやるのはカッコ悪い』的な空気を払拭するのに、どれだけ俺が気を遣ったか……」

「た、大変でしたね、それは……」

「どうしようもない問題児ってわけでもねぇんだよ。
成績も悪くはないし、俺が注意すれば、一応反省はする。

が、その場をやり過ごすためにそうしてるだけだから、俺が見ていないところで、また同じことを繰り返す。

ああいう要領のいい奴が、一番やりづらいんだよな……」

「宝城先輩、噂だと、芸能界から声がかかってるって……」

「ん? そうなのか? 初耳だな。
本当に芸能活動する気なら、こっちにも連絡があるはずだがなぁ……。
大げさな噂がたってるだけじゃないか?」


『それより』と、先生は、真剣な顔で私を見据える。


「万が一、宝城に何かされたら、すぐに相談しろよ」

「……はい」

「悪いな。俺も、もっと目を配るようにする。
あと、久我山のことよろしくな。
転校生として、色々面倒見てやってくれ」

「もちろんです」

「お前らがどういう関係かは聞かないが……まぁ、仲良くやってくれれば、それに越したことはない。
頼んだぞ、委員長?」


佐原先生は、意味深に笑った。

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