愛と狂気の真ん中で
ちゅっとリップ音がして,花が離れていく。

額以外にされたのは初めてだった。

近すぎてぼやける視界のなかで,花の長い睫毛が見えた。

俺は花の手を掴んで,花にされたように返す。

不馴れな俺の,噛みつくようなキスだった。

唇を離さないまま,衝動的に花を押し倒す。

恥じらいと好奇心が行ったり来たりしている花をみて,あぁと思い出す。

この体制は馬乗りというのだと,サスペンスドラマで見た。

テレビでみる大半を俺は経験しないし,これも自分がするのは初めてだ。

なんとなく,身長が地味に高い花を上から見るのが新鮮で,少し眺める。

色を増していく花の顔をみて,やっぱり可愛いなと思った。
< 10 / 12 >

この作品をシェア

pagetop