愛と狂気の真ん中で
そんなんだったのも母に愛されなかった一因かもしれない。
         
(しゃーね,出てみっか)

食料の減りを危惧して外に出てみたあの日。

早々に筋肉痛でふらふらしていた俺は,彼女に声をかけられた。



『ボク,迷子?』



俺を迷子と勘違いした花。

俺はどうなっても別に良いと思ってたし,だからこそ誰に話しても構わないと端的に説明した。



『ふーん。じゃあ,うちに来る?』

『は?』



当時花は18。

大学に通い始めて直ぐだった。

俺は何処にあるかも分からない【警察】という場所に連れていかれるか,放置されると思ってた。

親に教わらなくても,知らない奴に付いていっては行けないことなど分かっていた。

母親に殴られ,傷だらけの俺を誘うような奴ならなおさら。

断ろうと思ったが,とても大人から逃げられるような身体や土地勘がなかったこと,そしてついていっても今さら変わらないかと思ったことで,伸ばされた手をとった。

そして花の名前で揃いに,と,椿と言う名前を与えられた。
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