おそかれはやかれ。
「結くん、お疲れ様」

佐々木さんが優しく告げると俺の当番は終わる。

佐々木さんは大人しそうにみえるが、結構フレンドリーで、俺のことも下の名前で呼んできたりする。
利用者の学生たちにも、人気者で、中には佐々木さんに恋愛相談を持ちかける学生もいるくらいだ。
見た目にはそぐわないが、学園の頼れる兄貴って感じ。


「あーー。だめだ!パソコンがクラッシュしてしまった!」
佐々木さんが悲鳴をあげる。

「大丈夫ですか?」

「僕コンピュータに弱いんだよね。」

ちょっと見せてください。
あ、これは、このツールを初期化して、よっ、これで大丈夫なはずです!」

「ほんとだ!治ってる!ありがとう〜!!」

自慢じゃないけど俺はコンピュータに強い。
休みの日とか結構1人でPCをいじったりするし、機械を解体してみたりするのが趣味だ。

感謝してくれる佐々木さんを見ると、趣味でもしてきてよかったと思った。

「じゃあ、俺はこれで」

図書館から渡り廊下を渡ると、ついこの間まで満開だった桜の木が少し散っていた。
春ももう終わりなのだなと感じていた。

そんな桜の木下で、1組みの男女を見つけた。
よく見ると、クラスのマドンナトアちゃんと忌々しき木村先輩だった。

な!?木村め!トアちゃんまでをも自分のものにするつもりか!?

俺は心の中で叫ぶ。

木村先輩はよくモテる。
この間も女子に告白されていた。
くっそーーーー!悔しい!


教室に着くと、みんなトアちゃんが木村先輩のものになってしまうと嘆いていた。

「おい!トアちゃん帰ってきたぞ!」

みんな一斉に黙りこくる。
不自然な沈黙が生まれた。

ガラララ

「とあ!どうだった?」
トアちゃんと1番仲のいい綾が駆け寄る。

「断られちゃった〜」

クラスの男子は内心嬉しそうだ。

しかし、俺は怒りを爆発させていた。

木村〜〜!俺はこんな可愛いトアちゃんを泣かせたお前を許さん!

「そういえば、木村先輩って彼女いるとか聞かないよね。」
「たしかに!モテてるのにねー!」

女子たちが話す。

言われてみれば、木村先輩の彼女を見たことがない。
けど、こんなにモテるんだからこっそり美女と付き合ってそう。

そんなことを考えると余計にムカムカしてきた。
その日は授業どころではなかった。

「結!今日委員会?それとも図書館で勉強して帰んの?」
「いや!今日は、親と約束があるから早く帰るわ!また、明日一緒に帰ろー!」

今日は父さんとの約束の日で、ここから数駅隣にあるホテルのレストランで待ち合わせしている。

急いで身支度を済ませて向かう。
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