おそかれはやかれ。
ホテルのレストランに着くと、父さんは既に綺麗なスーツを着て座っていた。

「お!結!こっちこっち!」

笑顔で手を振る父に手を振りかえす。

机は丸テーブルに、白いテーブルクロスが架けられていて、高級感が溢れていた。

「俺、ここ座っていい?」

父の隣を指差す。

「そうだな!」

先に着くと一つ疑問に感じることがあった。

「なんで四席あるの?」
「なんでって、あと2人来るからだよ?」

え?どういうこと?


質問を続けようと思った時、入口から美しい女性がこちらに歩いてきた。

「こんにちは、少し遅れてしまいました。ごめんなさいね。」

俺はあまりの美しさに口を開けて見惚れてしまった。


「いやいや、僕たちも今着いたところだよ!紹介するよ、こちら恵さん。 こっちは息子の結。」

「はじめまして!中島結です。あまりに綺麗で見惚れてしまいました。」

「ふふふ、ありがとう。これからよろしくね。」


父さんの言った通り恵さんは絶世の美女だった。
しかし、妙だ。恵さんとは初めて会うのに、そんな気がしない。
どこかで会ったことがあるような。
こういうのが運命ってやつなのか?
俺と恵さんはきっと親子になる運命だったんだ!


「なにが運命だよ。」

心の声が漏れていたのか、ツッコミが入る。

ん?聞き覚えのあるこの声…。

「4人揃ったね!」
気を取り直すように父が話す。

「紹介しますね。うちの一人息子の海です!」
「木村海です。よろしくお願いします。」

女子に向ける愛想ばりばりの笑顔で木村先輩がこっちを見る。

この一つ多い席は木村先輩の席だったのか!?

「父さん!聞いてないよ!」
「あれ、言ったと思うけどな…」

父さんは昔から少し抜けたところがあるから振り回される。

「海のこともよろしくね。」

ニコニコと笑う顔が木村先輩にそっくりだった。
通りで初めてあった気がしないわけだ。

「あーあ、結って名前だから女の子かと思ってたんだけどな。なに、またじろじろ見て、惚れた?」

「な!俺が見惚れてたのは恵さんで、先輩じゃないだろ!」


ふんっ。と鼻を鳴らす木村先輩。


制服をきちりと着ている木村先輩も悔しいがなかなか美しい。


「これから、4人で仲良く暮らして行くんだ、新しい門出に乾杯!」
父さんは家族が増えることに嬉しそうだった。

母さんが出来ることは嬉しいが、兄が出来るなんて、突然すぎて頭が追いつかない。
しかも、あの木村先輩だなんて…。
これから俺一体どうなるんだよ!
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