優しくない同期の甘いささやき
見守られて
「私とお付き合いしてくれませんか? お願いします!」
私加納美緒(かのうみお)は、家電メーカー『ルンアップ』の本社ビルに勤務している。
ちなみに告白したのも、されたのも私ではない。
上の階へ行こうとした私は、エレベーターを待つよりも階段の方が速いと判断して、歩いてきたのだが……告白する女性の声が聞こえてきて、足を止めた。
階段の手前で、耳をすませる。盗み聞きする趣味はない。でも、こんな場面に遭遇したら、ひっそりと身を隠すしかないと思う。
誰が誰に告白しているのだろう?
抑揚のない声で相手の男性が返事をした。
「悪いけど、断わる」
あれ?
この声は、もしかして?
聞き覚えのある声だ。
「どうしてですか? 彼女、いませんよね?」
「彼女がいないから、付き合うと返事するのはおかしいよね? どうしてかは、好きな人がいるから」
淡々と答える中で、気になる言葉が出てきた。
好きな人?
好きな人がいたとは、初耳だ。
これは、ぜひとも知りたい。
興味がむくむくと湧いていると、「わかりました」と沈む声がした。その直後、こちらに小走りする音が近付いてくる。
私加納美緒(かのうみお)は、家電メーカー『ルンアップ』の本社ビルに勤務している。
ちなみに告白したのも、されたのも私ではない。
上の階へ行こうとした私は、エレベーターを待つよりも階段の方が速いと判断して、歩いてきたのだが……告白する女性の声が聞こえてきて、足を止めた。
階段の手前で、耳をすませる。盗み聞きする趣味はない。でも、こんな場面に遭遇したら、ひっそりと身を隠すしかないと思う。
誰が誰に告白しているのだろう?
抑揚のない声で相手の男性が返事をした。
「悪いけど、断わる」
あれ?
この声は、もしかして?
聞き覚えのある声だ。
「どうしてですか? 彼女、いませんよね?」
「彼女がいないから、付き合うと返事するのはおかしいよね? どうしてかは、好きな人がいるから」
淡々と答える中で、気になる言葉が出てきた。
好きな人?
好きな人がいたとは、初耳だ。
これは、ぜひとも知りたい。
興味がむくむくと湧いていると、「わかりました」と沈む声がした。その直後、こちらに小走りする音が近付いてくる。
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