優しくない同期の甘いささやき
迫られて
灰色の空を見上げて、水玉模様の傘を広げた。駅から会社までの道を歩くのに、足もとが濡れる。
じめじめした嫌な季節になった。
肩下5センチほどの髪がまとまらなくて、鬱陶しい。思いきって、ショートにしてしまおうかな。
傘を持っていない方の手で、毛先を押さえた。しかし、そちら側の肩にはバッグがあるから、うまく押さえられない。
前方に熊野の姿が見えて、私は傘を振りながら近寄った。
「おはよう」
隣に並ぶと熊野のキリッとした目がこちらを向いた。
「ああ、美緒か。おはよう」
「朝から雨でやだよねー」
「まあな。今日出掛ける予定あるの?」
「私はない。熊野はあるよね?」
昨日帰る時に、確認した熊野のスケジュールを思い出す。
熊野は顔を緩めて「ああ」と返事をする。
「美緒が俺の予定を把握してるの、うれしいね」
「把握しているというか、ちょっと気になっただけだよ」
「ちょっとじゃなくて、たくさん気にしろよ」
「うん……わかった」
素直に頷くのが気恥ずかしくなって、足元に視線を動かす。
熊野も同じだったようで、照れていた。
じめじめした嫌な季節になった。
肩下5センチほどの髪がまとまらなくて、鬱陶しい。思いきって、ショートにしてしまおうかな。
傘を持っていない方の手で、毛先を押さえた。しかし、そちら側の肩にはバッグがあるから、うまく押さえられない。
前方に熊野の姿が見えて、私は傘を振りながら近寄った。
「おはよう」
隣に並ぶと熊野のキリッとした目がこちらを向いた。
「ああ、美緒か。おはよう」
「朝から雨でやだよねー」
「まあな。今日出掛ける予定あるの?」
「私はない。熊野はあるよね?」
昨日帰る時に、確認した熊野のスケジュールを思い出す。
熊野は顔を緩めて「ああ」と返事をする。
「美緒が俺の予定を把握してるの、うれしいね」
「把握しているというか、ちょっと気になっただけだよ」
「ちょっとじゃなくて、たくさん気にしろよ」
「うん……わかった」
素直に頷くのが気恥ずかしくなって、足元に視線を動かす。
熊野も同じだったようで、照れていた。