優しくない同期の甘いささやき
スープ、サラダ、トーストは熊野が用意してくれた。彼は、本当に手際がよくて感心する。


「熊野って、すごいよね」

「ん? あ、うまい。ふわふわだな」


熊野はまずオムレツを食べた。顔を綻ばせるから、私まで笑顔になってしまう。


「よかったー。このスープも美味しい」

「固形のコンソメ入れただけだよ。簡単だから、美緒にもできるよ。今度、教えようか?」

「うん、教えて。簡単なものからできるようになりたい」

「ふたりで作ると楽しいよな」


熊野と暮らしたら、どんなことでも楽しくできそうだ。彼は文句を言いながらも、いろいろと手伝ってくれるに違いない。

私はそんな生活を想像して、口もとを緩めた。


「結婚、考えたことあるか?」


突然の質問に「えっ?」と熊野をまじまじと見つめた。


「結婚だよ。したいとか、したくないとか、どんな結婚を夢見てるとか、考えたことない?」

「あー、あるかな」


私はトーストをかじって、視線を落とした。

真面目に返すべきなのかな……。一応結婚に対して、憧れを抱いてはいた。
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