優しくない同期の甘いささやき
だが、離婚したばかりの姉を見ていると結婚とはなんだろうかと思うようになった。

好きで結婚しても、うまくいかない夫婦は少なくない。


「前はいつかしたいなと思っていたけど、今は結婚することの意味を考えちゃう」

「お姉さんのことがあったから?」

「うん……きっとたくさん幸せな時間があったと思うんだよね。でも、長く続かなかった。なんのために結婚したのかと思うの」


熊野は「そうだな」と頷いて、フォークを置いた。

テーブルの上で指を絡めて、言葉を続ける。


「恋愛の延長が必ずしも結婚だとは言えないとは、思う。見合い結婚の方が長く続く可能性が高いかもしれない。なんのための結婚かといったら、新しい家庭を作るためだと思う」

「新しい家庭……そっか」

「うまく作れるかどうかは、人それぞれだろうな。どんなことにも間違いはあるしね。でも、俺は信じたい」

「何を?」


私も食べる手を止めて、熊野を真っ直ぐと見据えた。


「美緒を想う気持ちが一生続くと」

「えっ?」

「結婚したいと思うくらい、美緒が好きだ。美緒と幸せな家庭を作りたい。絶対に作れると信じている」
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