優しくない同期の甘いささやき
やるべきことを全部済ませてから、ソファでひと息つく。密着して座る熊野は、私の肩を抱いた。

開けている窓から風が入ってきている。私はヒラヒラと揺れるレースのカーテンを見た。

接近する熊野を見れなかったからだ。

彼は不満を口にした。


「なんでそっち、向いてる? こっち向けよ」

「えっと、意味はないけど」

「美緒」


私を呼んだ熊野の息が耳にかかった。体がビクッと揺れる。

そんな反応を熊野はおもしろがった。


「なんだよ。耳、弱い?」


そう言って、息を耳に吹きかける。より大きく体が揺れてしまった。

右手で耳を押さえて、左手で熊野の胸を押す。


「や、やめてよ」

「やめない」

「えー?」


左手を熊野に掴まれた。押しても、遠くにいかない頑丈な体が近付いてくる。

離れないなら、私が離れるしかない……。しかし、獲物を捉えようとする鋭い瞳で迫ってきた。

彼は私の右手も取り、ひとつにまとめた。まとめられた手は頭の上へと動かされる。

私の足も外側から熊野の足で挟まれて、身動き取れない状態となる。心臓の動きが速くなっていった。
< 119 / 172 >

この作品をシェア

pagetop