優しくない同期の甘いささやき
「怖いか?」

「怖くはない……」

「キスしていいか?」

「いいけど……」


優しく唇を重ねて、すぐに離れた。その後、啄むようなキスを何度か繰り返す。なんだかくすぐったくなって、頬が緩んだ。

拘束されていた手はいつの間にか、解放されていて自由に動かせるようになっていた。

同じように緩んだ顔で私を見下ろす彼の肩に手を置く。


「いつになったら、美緒からしてくれる?」

「えっと……」


私は目を泳がせた。私からキスをしないと先に進まない。

熊野は焦れていた。

だが、強引に進もうとしない。強引に進まれてもイヤではないのに、それを伝えられない。

伝えるためには、キスをしなければ……。


「美緒、好きだよ」


私を見つめる瞳は優しかった。

手を熊野の首後ろへと回す。力を入れて、顔を近付けた。あと少し寄せれば、唇が触れあう距離だ。


「私も熊野が好き」


想いを伝えて、彼にキスした。このキスが合図となった。
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