優しくない同期の甘いささやき
熊野は息を整えながら、私の髪を撫でた。私は彼の胸に顔をつけて、落ち着いていく心音を聴いていた。

彼の胸は大きくて、逞しくて、あたたかい。触れているだけで、気持ちがよい。


「美緒、どうだった?」

「へっ? 」


この男は余韻にひたる時間を与えてくれないのだろうか。行為の感想を訊いてくるとは……。


「俺は最高だったよ」

「ええっ?」

「よがる美緒、色っぽくて、きれいだった」

「恥ずかしくなること……言わないでよ」


落ち着いていた心臓がまた忙しく動きだし、体が熱くなった。


「美緒はどうだったんだよ?」


どうしても私の感想を知りたいらしい。

どうだったかなんて、どう答えたらいいのか。


「わからなかったなら、もう一回しようか?」

「ええっ! ちょっ、ちょっと待って」


私に覆い被さろうとする熊野を制止した。彼は「なに?」と不満げな声を発する。

感想を言わないから、もう一回するとかあり得ない。

どういう思考をしてるのだろう。


「あの、うん、その……」

「ハッキリ言えよ」

「良かったです……」


こんなことを伝えるなんて、恥ずかしすぎる。熊野は満足そうに微笑んでいたが……。
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