優しくない同期の甘いささやき
「休みの日にお二人一緒にいるとは、仲がいいんですね。同期でしたっけ?」


山岡さんからの疑問には、熊野が答えた。


「そうですね。同期ではあります」


私は同意するように頷いた。付き合っているとは、言いにくい。

私としては、山岡さんと一緒にいる女性が気になった。先ほどからずっとスマホを操作していて、私たちの会話には関心がなさそうな様子だ。


「そちらの方は、彼女さんですか?」

「いえ、妹です」

「あー、そうなんですね。学生さんですか?」


妹さんはスマホの画面から目を動かして「はい」とだけ返した。兄妹と言われてみれば、目もとが似ている。

年の離れた妹さんだから、かわいがっているみたいだ。優しいお兄さんだな。

山岡さんは妹さんをチラッと見る。妹さんはまたスマホをいじっていた。


「お姉さんは変わらず、元気ですか?」


姉のことを訊かれて、私は熊野と顔を見合わせた。

離婚したと、伝えてもいいのかな。


「実は今、家に帰ってきています」

「それは、どういう意味でしょうか?」

「その、離婚しまして……」
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