優しくない同期の甘いささやき
「ええっ!」と山岡さんの声が大きくなって、妹さんから静かにしてと注意された。山岡さんは声のボリュームを下げて、また質問してきた。


「それは、最近ですよね? この前は結婚して、幸せにしているようなことを言ってましたものね?」

「そうですけど、いろいろありまして」


詳しく話せないから、いろいろとしか言えない。姉にしたら、あまり人に知られたくないことだろうから。

離婚成立後、家財を整理してから家に戻ってきた時は疲れているように感じた。でも、肩の荷がおりたようで、私たち家族には穏やかに接している。

親しい人だけに、離婚の報告をしていた。

山岡さんのことを話した時は、懐かしがっていたが、それとこれとは別問題だろう。

話せない私の胸の内を察したのか、山岡さんは「そうですか」とだけ言った。

私たちの注文する番になったので、挨拶をして別れる。


「まさか、あんなところで会うとは思わなかったね。言っていいのか、悩んじゃった」

「言いたかったのか?」

「言いたくはないよ。私が言うべきことじゃないもの」

「俺が言えば良かったのか?」
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