優しくない同期の甘いささやき
夕暮れになってから、私は帰った。

両親と姉はリビングにいて、私に「おかえりー」と声を揃えた。

全員で振り向いたから、なにかあったのかと怯むと、姉がニヤリとイヤな笑みを浮かべた。


「美緒が突然お泊まりするって言うから、お父さんはずっとそわそわしてたよ。いつの間に彼氏ができたのー?」

「えっ?」


予想もしていないことを言われて、私は固まった。彼氏ができたと伝えていない。

それどころか彼氏の家に泊まるとも言っていない。

会社の友だちの家に泊まると、母に伝えていた。だから、どうして彼氏の家に泊まったことが知られているのか不思議になる。

隠すつもりはなかったが、敢えて言わなかった。


「昨日、友だちがなぐさめ会をしてくれてね」


なぐさめ会……名前からして傷心中の姉を慰める会だろうと推測できた。

だが、その会がなぜ私のお泊まりに関係するのかは、わからなかった。


「でねー、帰りに美緒を見掛けたのよ。背の高いイケメンと手を繋いでいたから、ビックリした。帰って、お母さんにデートしてたよーと話したらね、お母さんもピックリしちゃってねー」
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