優しくない同期の甘いささやき
姉の話に母はうんうんと頷いて、話を引き継いだ。


「だってね、美緒から泊まると連絡が来た直後だったのよ。友だちって、男だったの? ってねーとビックリ仰天よ!」


母と姉が興奮気味に話す中で、父がじっと私を見ていた。

熊野と手を繋いでいたところを姉に見られていたとは、不覚だった。

姉はなぐさめ会により、以前のような明るさを取り戻せるようになったみたいだ。

そんな姿には安心するけれども、私のことには触れないでほしい。


「美緒も大人だし、泊まって彼氏と何しようとしてもいいけど、お父さんはショック受けてたわよ。今ごろ何してるんだーってねー」

「そうそう、泣きそうだったねー」


母と姉はおもしろがっているが、私は笑えなかった。さっきから父の視線が痛いほど刺さっているからだ……。

悪いことをしてはいないけれど、後ろめたくなる。


「彼氏の家だと言わなくて、ごめんなさい。でも、昨日は何もしてないから」


嘘ではない。昨日は寝てしまって、何もしていない。したのは、今日になってからだ。

胸を張って言えることではないが、勝手な想像はやめてもらいたい。
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