優しくない同期の甘いささやき
抱きしめられて
「好きなんです。私と付き合ってください」


階段手前まで歩いていた私は、足を止めた。

また告白?

うちの会社では階段の踊り場で告白するのが、流行ってるのかな?

仕事中じゃないの?

先へと進むことができず、仕方なく耳をすませた。決して聞きたいわけじゃない。


「俺、婚約者いるんだけど」


えっ?

この声は、熊野だ。


「知っています……えっ、婚約者? 加納さんと婚約したんですか?」

「そう」

「そんな……でも! 諦めたくないんです。私の方が好きだという自信があります。だって、加納さんと付き合う前……去年から好きだから」


胸がズキッと痛んだ。告白している人は、私よりも長く熊野を想っている。

去年の私は、違う人が好きだった。

でも、今は誰よりも熊野のことが好きだと胸を張って言える。

この人の想いに負けないくらい、好きだ。


「申し訳ないけど、今の彼女は誰よりも俺を好きだという自信があるんだ。だから、内藤さんとは付き合えない」


内藤さん……その名前を聞いて、ひとりの女性の顔が浮かんだ。総務部の知奈と同じグループにいるひとつ年下の人だ。
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