優しくない同期の甘いささやき
用事を済ませて、自分のデスクに戻る。腰を下ろそうとした時、視線を感じた。課長がなぜか私を見ていて、手招きされる。

なんだろう?

首を捻りながら、課長の前まで行く。課長はザッと周囲を見回して、立った。


「ちょっと、話があるんだけど、いい?」

「はい」


ミーティングルームで、課長と向かい合う。


「販売課の吉田さんが来月から育児休暇に入るんだけどね」

「はい」


吉田さんは30歳くらいの女性で、現在妊娠していてお腹の膨らみが目立ってきている人だ。

そろそろ休暇に入るのだろうなとは、思っていた。


「それで、少しだけ人を動かす予定でね。加納さんには吉田さんの後任になってほしい。問題はないかな?」

「はい、ないです」


業務内容は少し変わるが、隣の課への異動だと大きな変化はない。初めての異動ではあるが、不安も特になかった。

私の即答に、課長は安心したようで口もとを緩ませた。


「良かったよ。近々辞令が出るから、よろしく頼むね」  

「はい」


私の後任は、広報部の人になるらしい。

販売課には熊野がいる。今でも顔が見える範囲にいるが、もっと近くなる。

楽しくなりそうだ。
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