優しくない同期の甘いささやき
「美緒はすごいな。うん、良い案だよ」

「ね、ね! でしょ?」


彼に褒めてもらい、私は声を弾ませた。

結婚するにあたって、住むところをどうするかといろんな不動産サイトを見ていた。あれこれ相談するのも楽しくて、私たちは結婚に向けて、胸を膨らませていた。

挙式する場所も同時に探していた。まだどこも決まっていないのが、幸いだ。

一緒に暮せば、話し合う時間も増える。

帰らなくちゃと名残惜しくなることもなくなる。

いろんなことを前向きに考えると、楽しい未来だけが浮かんできた。


「あらためて、美緒のうちに行こう。同棲を許してもらわないとだな」


彼は真面目だ。私は首を横に振った。


「私が話すから、熊野がお許しをもらわなくてもいいよ。結婚することは認めて貰ってるんだしね」

「いや、ちゃんと俺の口から言いたい。言わせてよ」


本当に律儀な人だ。そういうところも好きだな。


「わかった。今度の休みに話そう」

「うん、美緒……」

「ん?」


熊野は私を自分の方へと引き寄せた。目の前まで顔が迫ってきたので、目を閉じる。

柔らかな唇が重なった。
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