優しくない同期の甘いささやき
私は重なる唇の隙間から、何度も息を漏らした。彼は離そうとしなく、ひたすら私の腔内を味わう。

唇の端からまざり合った唾液がこぼれそうになった。

このままずっとキスしていたら、どちらの唇も腫れてしまうのではないか。

変なことが心配になり、熊野の胸を押した。

唇が重なっているから、喋れない。意思表示するには、体を使うしかなかった。

もう一度、彼の胸を押す。

少しだけ離れた唇からの熱い息が、私の唇にかかる。


「なに?」

「言う……から……」


彼の濡れた唇がフッと弧を描く。


「言って」

「しょ、祥太郎」

「もう一回」

「えっ、祥太郎……」


彼はうれしそうに微笑んだ。私はその眩しい笑顔を直視できなく、顔を俯かせる。

照れちゃう。


「やっと、言えたな」

「うん、やっと言えた」


祥太郎はぎゅっと私を抱きしめて、顔を私の首筋に埋めた。私も彼の背中に腕を回して、力を入れる。

大きな彼は温かくて、気持ちが落ち着く。ずっとこのぬくもりを感じていたい。
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