優しくない同期の甘いささやき
「ほんと、かわいいんだから」


それから、顔を私の耳もとに寄せた。突然の接近に体がビクッと揺れる。


「キスしたくなるくらい、かわいい」


顔がまたポッ、ポッと沸騰した。

ここは会社である。

何を言うのよ。

反発心から軽く睨んだ。

しかし、睨みはまったく効果なしだった。冷たい緑茶を飲んで、ひと息ついた。

どうして、昼休みにドキドキしてるのだか……。

こんなふうに食べさせてもらうのが、初めてだったからかな。


「そういう顔もたまらなく、かわいい」


またもや恥ずかしいことを囁かれてしまう。


「もう! 早く食べよう」


再び箸を持つ私を見て、祥太郎は楽しそうに笑った。

なんだか心がむず痒くなる。その後の私は彼を一切見ないで、食べることだけに集中した。

打ち合わせにも集中できなさそうだったからだ。

食べ終わると祥太郎が片付ける。まだ一緒に暮らし始めて一週間だが、彼はいつも率先して片付けてくれているのだ。

私もやろうとするけれども、いつも止められてしまう。今もだ。
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