優しくない同期の甘いささやき
ときどき姉の顔を見ながら、山岡さんは話した。

高校時代の友だちに連絡をして、姉と今でも仲の良い人はいないか、今の姉の連絡先を知っている人はいないかと探したそうだ。

姉は大学のときにバイト先で知り合った人から、ストーカー行為を受けた。その時に、携帯番号やSNSのアカウントもすべて変えた。

本当に親しい人にしか新しい番号は教えていなかった。

そういった状況の中で、なんとか連絡を取ることに成功したという。

友だち伝いで得られなかった場合の最終手段は、私だったらしい。


「最初から私に言ってくれたら、良かったのに」

「私もね、同じことを言ったのよ。美緒に聞くのが一番早かったのにってね」


私と姉は笑った。山岡さんは居心地が悪そうにそわそわする。姉の手が山岡さんの腕に軽く触れた。


「でもね、尚くんにまた会えて良かった。美緒と祥太郎くんのおかげだから、まずふたりに報告したいと思ったの」

「お姉ちゃん……良かったね」


離婚する前から姉は苦しんでいた。離婚したことで、前向きになろうとしていたけれど、気分はなかなか晴れないようだった。
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