優しくない同期の甘いささやき
今、ここにいる姉の表情は生き生きしている。

山岡さんがきっと、すべてを受け止めてくれているのだろう。

姉は私と祥太郎のおかげだと言うが、私たちは何もしていない。

姉の心を動かしたのは、山岡さんだ。姉に未練があって、良かったかも。

祥太郎が口を開いた。


「山岡さんの想いが届いたんでしょうね」

「うん、そうだよね。山岡さん、お姉ちゃんのことをすごく心配していましたものね」


祥太郎に同意して、さらに山岡さんの一途な気持ちを姉に教えた、

未練たらしい人だとは、言わない。

山岡さんは照れた。


「そりゃあね、心配するよ」

「尚くん、いつも心配してくれてありがとう」


姉が微笑むと、山岡さんは頬を赤らめた。真面目というか、純粋な人だな。

微笑ましくなる。

山岡さんはとても姉を心配していて、連絡が取れてからは毎晩電話をかけたそうだ。

高校のときの思い出話や日常の話を楽しく語って、最後には姉の体調を訊いた。姉は最初、毎日の電話に戸惑ったが、いつしか電話を楽しみに待つようになっていたという。
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