優しくない同期の甘いささやき
毎晩かけるとは、すごい執着だなと思う。それだけ姉のことを想っていたに違いない。

何度か外で会うこともあって、先週山岡さんから告白されたらしい。


「尚くんから付き合おうと言われて、すごくうれしかったの」


うれしいと言う姉こそ、うれしそうだ。山岡さんも姉の笑顔を見て、うれしそうに微笑んだ。


「焦らずゆっくり距離を縮めていくつもりだったんだけど、なんか我慢できなくてね」


照れながら本心を話す山岡さんは素敵な人だなと思った。


「山岡さんとお姉ちゃん、すごく合っていると思う! 山岡さん、お姉ちゃんをよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


私が頭を下げると、山岡さんもすかさず頭を下げた。

この人なら姉のことを一番大切に想ってくれるだろう。

幸せの一歩を踏み出せた姉をうれしく思った。


「やだ。美緒ったら、泣いてるの?」

「だって、良かったと思うと泣けてきた」


「ほら」と横から紺色のハンカチが出てきた。それを受け取って、ジワッと出てきた涙を拭う。

祥太郎は穏やかな笑みを浮かべていた。
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