優しくない同期の甘いささやき
姉たちとの食事を終えて、彼と帰路につく。朝晩が涼しい季節になり、風がひんやりしていて気持ち良い。

ワインを飲んだから、顔が火照っていた。ほろ酔い気分の私は耳に髪をかけながら、祥太郎に寄り添う。


「お姉ちゃんたち、まだ始まったばかりだけど、うれしかったな」

「そうだな。今度こそ幸せになってほしいよな」

「うん! 山岡さんなら大丈夫だと思う」

「俺たちも負けないくらい幸せになりたいね」


私はピタリと足を止めて、祥太郎を見上げた。彼は首を傾げる。

しがみつくように彼の腕に自分の腕を回した。


「どうした?」

「今も幸せだよ」


祥太郎は目を細めて、私の肩を抱く。より密着して、気恥ずかしくなる。


「今日の美緒は、いい子だな」

「なにそれ? 子供扱い?」

「すげーかわいいって、言ってるんだよ」


私の肩を抱く祥太郎の手に力が入る。彼は素早く身を屈めて、キスをした。

触れるだけの軽いものだったけど、私は焦ってキョロキョロと首を動かした。

行き交う人が多い場所だ。

こんなところで止まった私が悪いが、キスを要求してはいない。
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