優しくない同期の甘いささやき
熊野の顔が接近してきた。私はパチパチと何度か瞬きをする。


「だ、大丈夫!」

「そうか? ま、そんだけ瞬きしたら、出ていったか?」


瞬きしたおかげか、熊野の顔がいつものように見えた。キラキラするゴミでも入ったのかもしれない。

それか、単なる気のせいだったのかも。

きっと、そうだ。気のせいだ。

熊野が輝いて見えるはずがない。

なんとも思っていない相手なのだから。

そういえば……。

あとで聞こうと思っていたことをすっかり忘れていたと、思い出した。


「あのさ、熊野」

「なんだ?」

「この前、告白されていたのをたまたま聞いちゃったじゃない?」

「ああ、加納が盗み聞きしてたやつな」


私は、思わずムッとして一瞥した。


「たまたま聞こえたって、あの時も言ったじゃないのよ。たまたまだからね」

「そんなムキになるなよ。で、何が言いたいんだ?」


たまたまを主張する私に熊野は冷静に訊いた。


「好きな人がいるって、言ってたじゃない? その好きな人って、誰?」


私からの問いが予想外だったようで、熊野は「は?」と目を見開いた。
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