優しくない同期の甘いささやき
自惚れてはいないけれど、いつも私を見ているというのは嘘でもなく、からかって言ったのでもないと感じる。

「了解」と返して、熊野の顔をじっと見つめた。こんなふうに見るのは初めてだったかも。

熊野の瞳が揺れて、視線を窓の方へと向けた


「そんな目で見るなよ」


なぜか動揺しているみたいだ。


「そんな目って、どんな?」

「なんか興味があるような目」

「えっ?」


キョトンとすると熊野は腰を屈めて、より近くに来た。


「俺のこと、気になってる?」


周囲に聞こえないくらいの声で訊いてきた熊野は、片側の口角をあげた。

ちょっと意地悪そうな表情はいつもの熊野はらしい。

しかし、問われた内容はいつもと違った。

こんなふうに訊かれたのは、初めてだ。

私は目を泳がせた。


「はっ? 気になっていないよ、熊野のことなんか……」

「昨日くらいから、めっちゃ視線を感じるんだけど」


こっそり見ていたつもりだったのに、気付かれていた。


「だって……」


口ごもると、「だって、なに?」と訊いてくる。
< 33 / 172 >

この作品をシェア

pagetop