優しくない同期の甘いささやき
決めるのは私なのに、ダメと言われても困る。知奈は小声で「実はね」と話した。

話を聞いて、頭痛がしてきた。

誰かを紹介してほしいと頼まれた知奈の彼氏は、この子どう?と知奈と一緒に写る画像の私を見せたそうだ。

それで興味を示して、ぜひ!と言われ、彼氏が知奈に頼んできたという。

知奈は美緒ちゃんに聞いてみないと分からないと答えたが、先輩に顔を立てないとならないと懇願されたらしい。

知奈は彼氏のためを思って、私をなにがなんでも紹介したいと言う。


「会うだけでいいから、お願い」

「その気がないのに、会うのは失礼になるでしょうが」


苦々しく返すと知奈は肩を落とした。知奈の彼氏が悪く言われるのはかわいそうに思うけれど、勝手に紹介しようとしたのが悪い。

知奈は私の顔を覗き込んだ。上目遣いで甘えた声を出す。


「美緒ちゃーん、お願い」


かわいくお願いされても、答えはノー。


「私たちもいるから、四人でお食事会しようよ。ね!」

「イヤだ」


「えー」と困る知奈を「おい」と低い声が呼んだ。

知奈はビクッと肩を揺らす。


「熊野……何?」
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