優しくない同期の甘いささやき
なぜか熊野に対して、怯える知奈が不思議になった。

どうしたのだろう?

それに、トイレから戻ってきた様子の熊野はなぜ自分の席に戻らない?


「そんなヤツ、加納に見せるなよ」


知奈のスマホにはまだ先ほどの画像が表示されたままだ。知奈は慌てて、画面を変えた。


「別に、私の彼氏を見せただけだから」

「福田、加納に男を紹介しようとしてたよな? どうして、そういうことする?」


急いで隠しても知奈が何をしていたかは、バレバレだった。

なぜ熊野が知奈を責めるのだろうか。理由が分からない私は、なにも言わずに傍観するしかなかった。


「どうしてって、ね、ほら、美緒ちゃんに彼氏いないから、だからね」


しどろもどろに答える知奈に熊野は「は?」と顔をしかめた。機嫌が悪そうだ。

しかし、知奈はスッと顔色を変えた。今ほど狼狽えていたのに、キリッとした顔になっている。


「熊野がモタモタしてるのが悪いでしょ? 私は美緒ちゃんにも彼氏がいたらいいなと思っただけだし」

「今はモタモタしてない。俺だって、それなりに攻めてるつもりだけど」
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