優しくない同期の甘いささやき
熊野はニヤリと口もとを緩めた。


「何もしないでいるなんてさ、つまらないじゃん」

「つまらないとか、そういう問題?」

「楽しまないとね」

「どう、楽しむつもりなの?」


なんだか身震いした。何を企んでいるのだろう。

今ここで、返事をしなかった私が悪い?

でも……やはり、今答えられない。


「今日は断られなかったから、良しだな。希望の光が見えたよ」

「どんな光よ?」

「加納が俺に抱かれて喜ぶ光? ハハハ」

「ちょっと、なんてことを言うのよ。ハハハじゃないってば!」


とんでもないことを言われた。どんなふうに攻めてくるのかと、恐怖も感じる言い方だ。

私は熊野の肩を叩いた。

彼は楽しそうに笑っている。


「顔、真っ赤だよ? 想像した?」

「してない!」


私は頬を膨らませた。熊野は肩を揺らして、まだ笑っていた。

返事をするまでの一か月、どんな一か月になるのだろうか。

この日の夜は、不安しかなかった。
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