優しくない同期の甘いささやき
受付で会社名と名前を告げると、エレベーターを案内される。

三階まであがり、いくつもある小部屋のひとつのドアの前に30代前半と思われる男性が立っていた。

黒色の半袖シャツにベージュ色のパンツを身に付けている。

入室すると、もうひとりの担当者もいた。先ほどの男性と同じくらい年齢のようだ。こちらは水色の長袖シャツに紺色のパンツ姿だ。

熊野はふたりと何度か顔を合わせているが、私は初めてだった。

まずは、名刺交換する。


「はじめまして、ルンアップの営業部ウェブ課の加納と申します」

「板野(いたの)です。よろしくお願いします」


先に黒色シャツの人と挨拶を交わす。水色シャツの人は山岡(やまおか)さんと名乗った。

山岡さんは名刺と私の顔を交互に見て、尋ねた。


「 加納さん、お姉さんがいますか?」

「はい、いますが」

「もしかして、美希(みき)さんですか?」


美希は、5歳年上の姉の名前だ。私が「はい」と返すと、山岡さんの表情が明るくなる。


「お姉さんとよく似ていますね! 私、美希と同じ高校だったんですよ」
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