優しくない同期の甘いささやき
今日も爽やかで、素敵だな。
あの笑顔、好きだな。
伏せ目も良い。

彼だけが輝いて見える。
ずっと見ていても飽きない……。


「加納……締まりのない顔してるな」

「へ? あ、熊野……やだ、見ないでよ」


こっそりと見ていたことを指摘され、他の人にも気付かれているのではないかと不安になる。

周囲をキョロキョロと気にしていると、熊野が腰に手を当てて、小さく息を吐いた。


「誰も気付いてないよ、俺しか」

「そう……熊野も私なんか見ていないで、仕事しなよ」

「俺は、お前しか見てねーよ」

「は? どういうこと?」


私の疑問に熊野は返事をしないで、自分のデスクに戻る。

私に文句言うために、私を見ていると言うの?

悪趣味としか思えない。

そんなことをしてる暇があったら、仕事しなさいよ。

あ、私もだ。

黒瀬さんを見ている暇があるなら、仕事しないと。

いそいそとパソコンに目を向けて、ひとつのフォルダを開いた。

しかし、集中力は三十分で切れる。

雑念を払って、真剣にキーボードを叩いていた私の鼻を好きな香りがかすめたからだ。
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