優しくない同期の甘いささやき
「10年も前に別れたのに、未練がましいヤツだと思われたくなくて、加納さんに興味があるような言い方をしてしまいました。すみません。ふとしたときに、美希のことを思い出すことがあります。それで、現在の様子を知れば、完全にふっ切れるかなと思った次第です」


私は、そっちだったのかと思った。

板野さんが山岡さんの背中を叩く。


「なんだよー。意味深な言い方するから、みんなが焦っただろ？」


初対面の私に興味を持ったのではないと分かって、ホッとしつつも恥ずかしくなった。

とんだ勘違いだった。

恥ずかしくなったのは、熊野も同じで困惑の色を浮かべていた。


「ほんと焦りましたよ、そういうことでしたら、加納と話してください」


山岡さんは「ありがとうございます」とお礼を言い、改めて私に連絡しますと話した。

熊野と外に出てから、ふたり揃って息を吐いた。


「俺、恥ずかしいことを言ったわ」

「熊野があんなことを言うから、私まで勘違いしちゃったじゃないのよ」


熊野は「ごめん」と項垂れた。
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