優しくない同期の甘いささやき
「どうした? 具合、悪い?」

「いつもと変わらず、元気だよ?」

「そうか? いつもより元気がなさそうに見えたけど」

「あー、考えごとをしてたからかな」


駅の外に出て、朝の眩しい光に私たちは顔を歪めた。


「もしかして、俺のことを考えてた?」

「ううん」

「落ち込む返しだな」

「あ、ごめん」


熊野のことを考えると言ったのに、考えていないとは失礼かも。

昨夜から熊野の顔を一度も思い浮かべていなかった。


「何か気にかかることがあるのか?」

「うん、ちょっとね」


熊野のことを信頼していないわけではないが、家族のことはあまり話せない。

姉に何があったのか知らないから、余計に言えない。


「話したくなったら、言って。それと、今夜空いている?」

「空いているけど、なに?」

「うちに来いよ。焼肉しよう」

「焼肉?」


熊野は「うん」と言いながら、歩くスピードを緩めなかった。同じ速さで付いていき、熊野の腕に手を触れる。


「お店じゃなくて、家なの?」

「うちの焼肉グリルを買ったけど、まだ一度も使ってないんだよ。それを使ってみたい。付き合えよ」
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