優しくない同期の甘いささやき
うちの焼肉グリルとは、私たちが勤めている会社の商品のことだ。煙を吸引するファンが付いている。

私も買って、使ってみたいと思っていた。


「そういうことなら……いいよ……」


尻つぼみの返事をする。熊野は足を止めて、顔を緩めた。


「攻めると言ったけど、まだ何もしてないなと気付いたんだよ。で、呼んじゃえってね」

「変なこと、考えてないでしょうね?」

「美緒のことしか、考えていない」


突然名前呼びされて、私は目を丸くした。下の名前で呼ばれたのは、初めてだ。


「そんなに警戒するなよ。ただ一緒にいたいだけだから」


朝から甘い言葉を言われて、私の頬は熱くなった。


「そんなこと言われたら、警戒しちゃう……」

「うちの近くにある高級スーパーで良い肉を買おう」

「高級なお肉! 食べる!」


なかなか食べられない高級肉に私は、つられてしまった。

熊野は楽しそうに笑って、私の頭を軽く叩いた。


「ほんと、かわいいな」


今度はかわいい?

朝から変なことばかり言わないでよ……。
< 68 / 172 >

この作品をシェア

pagetop