優しくない同期の甘いささやき
熊野の気持ちをみんなが知っていた?

嘘でしょ?

黒瀬さんが笑う。


「熊野は分かりやすいからね。みんな熊野が加納ちゃんを好きだと気付いていたよ。あー、加納ちゃん以外はね」


黒瀬さんは私の気持ちにも気付いていた。

まさかと思うけど、それもみんなに気付かれていただろうか?

熊野が絶句している私の心を見透かしたかのか、私の耳もとに顔を寄せる。


「加納の気持ちは知られていないよ」


良かったと安堵したのは束の間で、先輩社員たちから冷やかしの声があがった。


「あらあらー、何を囁いたのかしら?」
「もう落ちる寸前だな。熊野、あと少しだ!」


さすがに熊野も戸惑いの色を浮かべた。


「ちょっとみなさん、からかわないでくださいよ。加納に嫌われたらどうするんですか?」


それを聞いて、二つ上の女性の先輩が挙手する。この先輩は熊野に気があるらしくて、何度か誘っていたのを見たことがあった。


「大丈夫よ。振られたら、私が慰めてあげるから」

「やめてください。振られないように頑張るんですから、余計なことを言わないでください」
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