優しくない同期の甘いささやき
「んんー! 美味しい! 熊野も食べて」


熊野は私が食べる様子を見てから、自分も食べ始めた。


「うん! うまいな」

「ね! やっぱ、高いお肉は違うね」

「美緒、好き嫌いなかったよな?」

「何でも食べるよ。どんどん焼こう!」


焼こうと言ったものの、ほとんど焼いたのは熊野だ。焼くくらいなら私にも出来るのだが、とにかく食べろと言われた。

口は悪いけど、優しい彼に任せて胃が膨らむまで食べた。

せめて片付けはやろうとしたが、それも制止される。


「遅くなるから、いいよ」

「ありがとう」

「送るよ」

「ありがとう」


熊野のマンション近くの駅まで送ってもらうつもりだった。

だが、熊野は一緒に改札を通過しようとした。


「ここまでで、いいよ」

「遅くなったから、送らせて」

「この時間に帰ることもあるから、大丈夫だよ。私の家まで送って、戻るのに1時間はかかるよ。今週、熊野は忙しかったし、疲れているでしょ? 早く休みなよ」

「今週の俺のこと、よくわかってるね。そういえば、よく見てたよな?」


予想もしていないことを言われて、私の心臓はドキッとした。
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