優しくない同期の甘いささやき
確かに見ていた。


「よく目が合ったよな」

「あー、うん……だって、熊野も見てるから」

「俺はいつも見ていると言っただろ?」

「うん、本当だった」


私は熊野を知ろうと思って、彼を意識して見た。熊野も私を見ていたことが多く、視線がぶつかることがたびたびあった。

そのたびに照れてしまったが、つい熊野に目がいってしまうのだ。

たぶん熊野に惹かれている。気持ちの変化を、彼になかなか伝えられない。

どのタイミングで伝えたらいいのか……。


「今夜俺といて、どうだった?」

「どうって、楽しかったよ?」

「付き合いたくなった?」

「前向きに考えられるようになった」


熊野は「よし!」と私の頭に手を置く。


「熊野はさ、よく私の頭を触るよね?」

「ん? だって、かわいいから」


恥ずかしくなることをさらりと言う。私は目を泳がせてから、咳払いをした。


「ほんと、ひとりで帰れるからここでいいよ。今日はありがとう」

「わかった。気を付けてな。着いたら、連絡しろよ」
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