優しくない同期の甘いささやき
手を振って、改札前で別れる。振り返ると、私を見守る熊野がいた。

きっと見えなくなるまで、見ているに違いない。

もう一度手を振って、エスカレーターに乗る。

ふと下りのエスカレーターを見たら、姉の夫である健人さんが降りてきた。健人さんの後ろには見知らぬ女性がいて、親しそうに健人さんに触れていた。

えっ?

すれ違ったが、健人さんは私に気付かない。

人違いだった?

似ている人だった?

そんなに似ている人がいるものかな?

嫌な予感で胸がざわつく。

帰宅すると、姉はまだ家にいて母や父と談笑していた。

人違いだったかもしれないから、今夜見たことは言ってはいけない。

そんなふうに思った。

あれは本当に健人さんだったのかと、何度もすれ違った人の姿を思い浮かべた。

熊野から「着いたのか?」と連絡が来るまで……。
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