優しくない同期の甘いささやき
私の話を聞いた熊野は、私が納得するまで付き合うと言った。

熊野がいてくれるのなら、心強い。

昨夜別れた場所で待ち合わせた。


「ごめんね、変なことに巻き込んじゃって」

「気にするなよ。俺は美緒に会えるだけで嬉しいから。今日もまた会うなら、昨日帰さなければよかったな」

「もう! なに言ってるのよ」


最近の熊野は恥ずかしくなることばかり言う。

私は毎回、動揺させられている。


「今日は休日だから、駅を利用するか難しいとこだよな?」

「エレベーターですれ違っただけだから、どっちの方向に行ったか見てないし、どこで見張ろうかな?」

「あそこの店に行くか? 二階の窓際からだったら、駅の入口も見えると思う」

「どこ? あそこ? 見えそう!」


私たちは駅の近くにある洋菓子店に入った。一階はケーキなど洋菓子を販売していて、二階はカフェスペースになっている。

タイミングよく窓際の席に座れた。プチケーキ三点盛りセットを頼んで、外を眺める。

下を歩く人の顔は判別できる距離だ。

しかし、帽子やフードを被っていたら見えにくい。
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