優しくない同期の甘いささやき
それでも、見るしかない。

探偵ごっこ、開始である。

ケーキを食べながら、コーヒを飲み、行き交う人たちをチェックした。

健人さんらしき人は、見あたらない。

人違いだったのかなと思いたいが、嫌な予感が拭いきれない。

ため息をついて、向かい席に顔を向ける。私を見ていたらしい熊野と目が合った。


「熊野、どうしてこっち見てるのよ?」

「だって、顔も知らない人を探せないよ。美緒を見ている方が楽しい」

「楽しいって……私は楽しんでいないよ?」

「ごめん、浮かれていて」


いつになく、熊野はしゅんとする。

なかなか確証が得られないからといって、熊野に苛立ちをぶつけるのは間違いだ。

謝るのは、私の方。


「ごめん。こんなつまらないことに付き合わさせてしまって……熊野の貴重な休みが無駄になっちゃうね。そろそろ帰ろうかな」

「待て、待て。帰るなよ」

「でも、見てるだけじゃ意味ないし」

「じゃなくて、帰るならさ、うちに来いよ。時間、あるんだろ?」
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