優しくない同期の甘いささやき
この辺の住民らしい品の良さそうな人が多いと感じる。私たちは静かに見て回った。

熊野はひとつの台の前で止まった。そこには、ガラスのフラワーベースが並んでいる。

花を飾る趣味があるのかな?

熊野は一輪挿しを持って、いろんな角度から見ていた。


「部屋のどこに置くの? リビング? 玄関?」


私の質問に熊野は「えっ?」と言う。質問の意図をつかめていない感じだった。

熊野が手にしている一輪挿しを指差す。


「それ、買おうか迷っているんでしょ?」

「ああ……この前、うちの母親が一輪挿しを割ってしまったと言うから、代わりになるかなと思ってね」

「そうなんだ。熊野の部屋に置くのかと思った」

「俺は、花飾らないよ」


熊野は話しながら、一輪挿しを元の場所に戻した。お母さんにどんなのがいいか聞いてから、買うことにするらしい。

私は、かわいい猫の置物を見つけて、取ろうと手を伸ばした。その時、横から女性の手が出てきて、同じ置物に触れようとした。

お互い、動きを止める。女性の年齢は私たちと同じくらいに見えた。


「あ、どうぞ」

「いえ、お先にどうぞ」
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