優しくない同期の甘いささやき
めまいがしそうになる。

何も返せないでいる私を熊野が「大丈夫か?」と心配した。

私は熊野に大丈夫だと目配せしてから、健人さんを見る。


「健人さん……外で話しませんか?」


いろいろ聞きたいことはあるけれど、店の中で話す内容ではない。

今も近くにいる人たちから好奇の視線を浴びていた。

外に出て、通行の妨げにならない場所で立ち止まる。

カフェにでも入って、話した方がいいかもしれない。


「立ち話で済むような話ではないと思うので、どこかに入りましょうか?」


しかし、私の提案は女性によって、拒否された。


「いいえ、長く話すつもりはありませんから」


私は健人さんに言ったのに、なぜこの人が答えるのだろう。

この女性の年齢は私と変わらないように思えた。自分たちがやっていること後ろめたさは全くないようで、偉そうにする言動に苛立った。


「でも! 私の姉のことを言っていましたよね?」

「ええ。でも、あなたは何も知らないみたいなので、特に話すことはないですね。私たちの関係を確認したいのなら、お姉さんに聞いた方がいいですよ。健人さん、行きましょう」

「ちょっと! 逃げるんですか?」
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