優しくない同期の甘いささやき
女性はフンッと鼻息を荒くして、健人さんの腕を組んだ。

健人さんは女性に合わせてこちらに背中を向けたが、振り返った。


「美緒ちゃん、ごめんね。美希に聞いたら全部わかるから」


健人さんは状況を何も言わなかった。

私は、結局何もできなかった……。


「なんなの、あの人たち……ひどい」


姉を傷付けられて、悔しかった。

目に涙が溜まっていくのを感じて、顔を上に向けた。

私が泣いても、どうにもならない。

熊野が私の手を握った。


「うちに来いよ。落ち着いてから、帰った方がいい」


本日二度目の「うちに来いよ」は一度目と意味合いが違った。

私は素直に頷いて、熊野の家まで歩いた。どこをどう歩いたのか、よく覚えていない。

熊野に促されて、ローソファーに座った。熊野からもらった冷たい緑茶を飲んで、ひと息つく。

姉に聞くべきなのだろうけど、聞くことができるだろうか?

姉と健人さんは、三年交際してからの結婚だった。まだ結婚してから二年しか経っていなく、仲の良い夫婦だと思っていた。
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