優しくない同期の甘いささやき
だから、簡単に無理だと決めつけたくない。


「どうして、無理だと言えるの? まだお姉ちゃんたちは夫婦なんだよ? まだ離婚していないんだから」

「ごめん、無神経なことを言った」


熊野は涙ぐむ私を抱きしめた。自分でも無理だと思ったのに、熊野を責めた……。

熊野は何も悪くない。八つ当たりだ……。

ただ何を信じたらいいのか、わからない。

熊野も今は私を好きだと言っているけど、変わるかもしれない。私も黒瀬さんが好きだったのに、変わった。

私自身も心変わりしたのだから、健人さんの心変わりに対して、怒れないのでは?

でも、結婚している人としていない人は違うよね?

そうなのかな?

自問自答を繰り返しても、正解が見つからない。


「美緒、こんな時に言うことじゃないと思うけど……俺はずっと変わらずに美緒を好きでいるよ」

「熊野……」

「気持ちが変わって、別れることはある。だけど、誰でもがそうではない。変わらないで、仲良くしている夫婦もいるよね?」

「うん……いるけど」


熊野の気持ちを疑っているわけでもないし、みんながみんな同じだとも思ってはいない。
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